ロンドンの曇り空と、日曜だけのオイスター | Sunday Oysters in Marylebone

ロンドンの冬といえば、空は決まって低いグレーです。

でも、そんな少し憂鬱な曇り空さえも「悪くないな」と思える瞬間があります。それは、美味しいものの予感がする日曜日の朝です。

ケンブリッジでの予定を終え、日曜の朝に向かったのはマリルボーン。
普段はブティックやカフェが並ぶ閑静な通りが、日曜日だけはファーマーズマーケットに様変わりします。観光地の熱気とは違う、地元の生活に根付いた「食の温度」みたいなものが、ここにはあるんです。

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通り全体が、美味しい匂い

St Vincent Street に足を踏み入れると、まず空気が変わったのがわかりました。

冷たく澄んだ冬の風に乗って、焼きたてのパンの香ばしさや、どこかの屋台から漂う温かいスープの香りが流れてきます。
テントの下には、驚くほど鮮やかな野菜たち。

山積みのチーズや、土のついたキノコを見ていると、スーパーできれいにパック詰めされた食材とは違う、生命力のようなものを感じます。お店の人と常連さんが「今日のトマトはどう?」「最高だよ」なんて言葉を交わすリズムも、聞いていて心地がいい。

ただ歩いているだけで、少しずつ、でも確実に胃袋が目を覚ましていくのがわかります。

立ち食いの美学

通りの奥で、氷を敷き詰めた一角を見つけました。
殻付きの牡蠣が並ぶ、フィッシュモンガーのスタンドです。

ロンドンの路上で、しかもこの寒空の下で生牡蠣を食べる。その背徳感と贅沢さに惹かれて、迷わず足を止めました。

「2つ、お願いします」

そう伝えると、彼が慣れた手つきでナイフを入れます。パカッという音とともに現れたのは、つやつやとした乳白色の身。
レモンをきゅっと絞り、殻ごと口元へ運びます。

殻に触れる唇には冷たさを感じますが、つるりと滑り込んだ身を噛み締めた瞬間、口の中は濃厚な旨味でいっぱいになりました。
強い塩気と、クリーミーな甘み。そして鼻に抜ける潮の香り。

たった2ポンドの一粒ですが、そこには冷たい海のエッセンスが凝縮されていました。
「美味しい」という言葉よりも先に、体が「嬉しい」と反応するような、そんな滋味深い味です。

曇り空も悪くない

口の中に残る潮の余韻を楽しみながら、再びマーケットの雑踏を歩きます。
温かいコーヒーを片手にすれ違う人たちの表情は、みんな穏やかです。

さっきまで重たく見えていたグレーの空も、美味しいものを食べた後だと、なんだかロンドンらしくて良い景色に見えてくるから不思議です。

特別なご馳走もいいけれど、旅の途中でふと出会う、こういう素朴な一口こそが、記憶に長く残るのかもしれません。


Information

店名Marylebone Farmers’ Market (London Farmers’ Markets)
住所/エリアSt Vincent St, London W1U 4DF (Aybrook St, Moxon St周辺)
価格帯入場無料(生牡蠣は1個£2前後〜、支払いはカード推奨の店舗が多い)
Access地下鉄 Baker Street 駅、または Marylebone 駅から徒歩約10分
Notes開催は毎週日曜の 10:00〜14:00 です。 人気のベーカリーや生鮮食品は午前中に少なくなってしまうので、少し早めの11時前くらいに行くと活気もあって楽しめます。 基本的にテイクアウト形式ですが、近くの Paddington Street Gardens のベンチで食べるのも気持ちが良いですよ。
生牡蠣が売られていますが、体調や体質に応じて無理せず。
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